ここしばらく、実家とこっちを行ったり来たりしていたんですけどね、実はお見合いってやつだったんですよ。親がね、お前もいい歳なんだから、独り立ちして家庭を持てとね、ずっと電話口で言っていたんですけど、そんな気はなかったんで、拒否してきたんですけど、とうとう折れて、行ってきたんですよ。それで、まあ、書類ってやつを先に送って、晴れて見合いの席についたわけなんです。先方は飛び切りの美人というわけではないにしても良いとこの方だったので、とりあえず、デートというやつをこなしてきたんですよ。実家の方の訛りとか地域の話題に花が咲きましてね、いい感じでしたが、なんとなくね、俺の人生ここまでか、みたいなことを考えてしまってね、どんよりしてましたよ。その後も晴れない気分でデートをこなしてきたんですけど。それで、まあ、これからの人生のことを考えつつお付き合いしましょうかっていうところまで来てしまって、自分も覚悟を決めようというところまで来たわけですよ。そしたら、突然向こうが「あなたはいい人ですよね」といってきまして。その時正直うわっと思ったんですよ、先走ったかしらとね。で、その方は続けて「いい人なんですよ、でもねぇ」と。ここまで来たら、さすがに鈍感な私でも気づきまして、なにかうまいことを言おうと思ったんですが、「はぁ」しかでてこない。肝心な時に私は「はぁ」と相槌を打つだけなのですよ。で、結局、お見合いはなかったことに。いやぁ、さすがに参りましたね。

そんなことがあって、こっちに帰ってきたんですけど、今から稲荷でも作って一人寂しくつまもうかと思います。化かすつもりが化かされたとでも言えばいいんでしょうかね、今ごろになってふつふつと悔しさがわいてきて、舎利を握る手も震えるんですよ。ああ、悔しい、ああ、悔しい。どんな強がりをいったところで、負け犬の遠吠えのわけですから、素直に悔しいといいますよ。明日からまた気ままな生活を続けることにしますよ。