地方から東京に出てくるってことは、重要な事柄だなと思うんだけれど。「主観的というか個人的な事柄は表に出すな、お前は歯車だ!」って小さいころ習ったから、かたくなにその教えを守っているんだけれど、たまに踏み外してもいいだろう。だいぶ時代が変わったけれど、中島みゆきの「ファイト!」のなかに“後ろ足ですなかけるようなこと”っていう表現が上京をさすものとして使われていて、上京するっていうのはその地方が明らかに、労働力を失うことなんだと思う。自分の田舎は農家が多いから、そうだと思う。ついでに、いったん東京へ出てしまうとなかなか帰らないし。っていう前置き。
くるりの新譜に関して、「原点回帰だ」ってことが言われているけれど、その表現はしっくりこないなと思った。というのも、デビューからしばらくは京都と東京の往復していたわけで、地方性っていっていいかわからないけれど、東京の外だからできることっていうのがあると思う。くるりの初期はそういうものでいっぱいだった気がする。「東京」なんかは、明らかに外から東京にやってくることで成り立つ距離感ってのを孕んでいたけれど、「アンテナ」の曲に関して言えば、その距離感は失われている。だからこそ、「アンテナ」には原点回帰って言葉は似合わなくって、むしろ、望郷とかそんな感じを抱いたんだ。これは、個人的な感情。これって関西系(というか京都あたり)のアーティストに多いんじゃないかな。と、勝手に思ってます。